高齢者のための住宅改修ポイント。失敗しない工事見積書の読み方についてご紹介しています。
住宅改修を成功させるために《建築士からのメッセージ》
- 着工後に介護保険(住宅改修費)の支給限度基準額(20万円)を超える金額を請求された
(見積があいまい) - 不要の工事を行い数百万円を要求された
- 工事のやり直しに応じない
このような苦情が消費者相談に多く寄せられております。
金額に見合った正当な工事がなされるためには,事前に見積書の内容を確認しておくことが大切です。工事見積をどのようにチェックしたら良いのか,建築士の目からそのポイントをあげておきます。事業者任せにしないで,あなた自身で確かめましょう。
事業者により見積はこんなに違います
工事見積書は,なぜ必要でしょうか
「見積書の内容が良くわからない」などの理由で,よく確かめないで,工事をしてもらった。当初に考えていたのとは違っていたので,事業者に変更を頼んだら,高額な支払いを求められた。このようなトラブルを起さないためにも,見積りは必ず確認しましょう。
工事見積りとは
どんな工事に,どのくらいの費用がかかるか。あらかじめ工事に必要な材料,品質,工賃などを見積もることです。
見積りは必ず取る
どんな小さな工事でも,必ず書面にして,確認しておくことです。また,工事内容がわかる図面や製品のカタログなど,添付資料も必要です。
工事見積りの用語を理解しましょう
一般によく使われていますが,わかりにくい用語の説明です。
○○一式 | 工事がごく小規模で,工事金額がほぼ一定の場合,材料・工賃を合わせて「一式」とする場合があります。 |
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別途工事 | 見積書の範囲に無い工事です。見積りに含まれる工事か否か,よく見極めておく必要があります。 便所の手すり取付工事のみ見積りの場合,便器の取り替えは別途工事になります。 |
追加工事 | 見積り時点では正確な費用が出せない場合,後日清算するものです。 たとえば,床の張り替えで,工事を始めたら床下が腐っていて,補強が必要になった場合は,「追加工事」となります。 |
諸経費 | 施行業者が工事をするうえで必要な経費です。 工事規模に応じて諸経費率は違ってきますが,増改築工事の場合は,新築工事より割高となります。 |
廃材処分費 | 建築工事の際に出る廃材は勝手に処分できません。産業廃棄物処理業者に処理してもらう費用です。 |
材料費と工費 | 材料費とは,使用される材料,製品,部品など。工費は、それらを取り付ける技術料などです。 |
見積金額の違いはなぜ起るのでしょう
金額の違いは,材料や商品などの製品の違いや仕入れ価格が異なること,工賃,諸経費の違いなどから生じます。見積金額が安いだけで,工事の良否は判断し難いものです。手すりや便器など,メーカーによって,品質も価格も違います。カタログなどで納得してから決めましょう。大切なことは,金額に相当した良心的な工事をしてくれる事業者を選ぶことです。
工事内容明細の見方
小規模な住宅改造では,初めから工事箇所別に具体的な工事内容が書かれております。材料費,商品名,数量などに加えて,工賃や諸経費などがあります。出来れば,図面やスケッチなどもあると,工事の出来上がりを想定しやすくなります。
特に良い見積りの事例
手すりなどの取付工事ですが,手すりの材料は何か,どんな長さのものを,どこに取り付けるのか,これに伴う付属部品などが,こと細かく記入されております。これに加えて,改修箇所の平面図には,取り付ける位置やかたちまで表示されております。
介護保険を利用した具体例と見積り
Aさんは86歳(要介護認定・4),なんとかひとり暮らしをしています。住宅内で転倒するなどのケガをしたことから,介護支援専門員(ケアマネージャー)に勧められて住宅改造し,排せつ,入浴が自分で出来るようになりました。