• 瀬戸内の趣を楽しむ家 Before写真1
  • 瀬戸内の趣を楽しむ家 Before写真2

創意工夫点

 古民家の趣を損ねることなく,ライフスタイルに合った間取りの見直し,水回りの改善,寒さの解消等を図り,生活の質の向上を図った。施主様が気に入られていた梁や土壁は,見せる形で既存利用し,新規に差し替える箇所も素材の質感を活かし,古民家から感じられる木,土,紙のぬくもりが尊重されるよう留意した。将来的には,自宅と兼用して地域のコミュニティ拠点地やゲストハウスとしても活用したいという施主様からの要望から,1階はLDKが一体となるようにし,大勢でも交流を図りやすい見通しの良い空間を演出した。

選評

 向島の集落内にあった築百年を超える空き家を若い世帯が購入し,ライフスタイルに合わせて改修した事例である。独特の小屋裏構造や土壁など古民家の趣を残しつつも,家族の視線に配慮したオープンキッチンや断熱材などを工夫することで,この家固有の魅力的で豊かな空間が実現できている。今後も,納屋の活用など住みながら家に手を入れていくことが想定されており,古い家が若い世代の暮らしとともに生き続けることが評価された。

 施主は若いご家族ながら古民家ならではの材料や雰囲気の価値を認め,設計者と協力し限られた費用を実用的かつ効果的な改修工事に絞ることで,タイトル通りとても「趣」のある魅力的な空間づくりにつながったと思う。また,住まい手がはじめからの完成形を目指すのではなく少しずつ住みやすい環境づくりをしており,「住まいづくり」を継続して楽しんでいると感じた。その意味でも,本作品は,住まい手が古い住宅の価値を認め住まいづくりに参加することは空き家対策上も有効だと気づかせてくれる好事例であろう。