• くらしの家 Before写真1

創意工夫点

 大量供給された均質化した住宅であっても,どれだけ豊かに暮らせるかを探りたいとの思いから,祖父が建てたどこにでもある築40年の一戸建てを,自宅兼設計事務所とするために改修した。コンパクトな住まいでありながら床面積を増やすのではなく,家の中に視線や空気が通る「抜け」をつくることで,小さいながらも広がりを感じられる豊かな空間を目指した。
 大切にしたのは,この土地の材料を積極的に使い,地域の職人の「手仕事」を活かすこと。この場所を訪れる人々にとって,豊かな「くらし」の手掛りとなることを願っている。

選評

 均質・大量供給された時代の築40年の戸建て住宅を改修することによって,どれだけ豊かに暮らせるのか…,このテーマに正面から向き合い,完成度の高いソリューションを見せてくれた作品である。視線や空気が通る「抜け」を様々に設けた小さいながらも広がりが感じられる空間,経年変化も楽しめる自然素材で遣りかえた外観,一人の大工と対話を重ねながら仕上げた想いとおさまりの異なる開口部,そして,地域の顔が見える職人・専門家との協働で仕上げた庭,家具,建具,陶器等,細かいところまで気持ちの行き届いた,見て心の洗われる作品となった。