創意工夫点

 歴史ある街道沿いに明治時代に建てられた町家。寂れていく街並みに一軒でも灯りを灯し続けたいと帰郷し,一人暮らしを快適に過ごせる住まいへ改修した。
 同級生やゴルフ仲間が集う家にというご主人の希望から〝大人の隠れ家〞をイメージして提案した。
 耐震性や寒さ対策は勿論のこと,既存の梁や地元の工芸をインテリアに盛り込み,空間の居心地に拘った。ただの古民家再生ではなく,様々な時代を駆け抜けたこの家と人にふさわしい時と趣を感じさせる空間に再生した。

選評

 かつては商店が建ち並び賑わった故郷の通りに,再び明かりを灯したいという住み手の思いが,幼少期を過ごした町屋をリフォームすることで実現した。表通りに面しては格子と坪庭で表情をつくり,暗く圧迫感のあった町家型の続き間を吹き抜けのある開放的なLDK空間に改修することで,気の合う仲間が集い楽しむ雰囲気を建物の内と外に生み出している。遠隔地との二地域居住の一拠点として使われており,新しい住まい方としても興味深い。