• 上条(sorajo)の家 海が見える山の家 Before写真1
  • 上条(sorajo)の家 海が見える山の家 Before写真2

創意工夫点

 築年数は80年を超え、10年以上空き家であった海が見える古民家を改修。背後には山があり、木と土で出来たこの家はいつか山に還るのだろうと感じた。改修に使用する素材も自然素材・無垢材でシンプルに仕上げるよう心掛けた。既存の躯体や小屋組は、子供達がわくわくするような小さくて狭くて面白い居場所に利用することで、そこにある必然性が生まれた。施工は島内在住の大工、左官、設備士に依頼し、荒壁を塗ってもらうワークショップを開催するなどして、地域に根付いた家づくりを目指した。

選評

 離島の海が見える空き家を改修した住宅で、住むことへの力強さを感じさせる事例である。縁側廻りの土間化、床下と天井の断熱、建具のペアガラス等最低限度の改修とし、つくり込み過ぎずに、寧ろ使いながらつくり続けていく手法は、空き家活用として有用である。また、地元の大工、左官、設備技士とのコラボレーションは、地元コミュニティの形成にも繋がっている。築80年の建物がさらに生まれ変わっていくことが想像される。

 瀬戸内の美しい島々と海が見渡せる素晴らしい景観を有する空き家を、内外の空間を柔らかく繋ぐ縁側改修などの設計上の粋な工夫により再生した素晴らしい事例であるが、併せて興味深いのは、子供が将来島を離れる事を想定し、今後10年間のライフスタイルに合わせ、生活機能を集約、小さく暮らすという提案である。
 古民家が持つ低い・暗いなどのマイナス要素は、小さなお子さんの想像力を掻き立てる僅かな工夫でメリットに変換されており、コストのかかる大規模な改修に依らない地域の風土に根差した豊かな住まい方を実現している。