創意工夫点

 敷地南面は旧国道の商店街で,車や人通りが多く,空き地ではあるが,将来的に建物が建つであろう,また,東西は近隣と密接して建物が建つ。しかし,北面は川辺の桜並木,山並みがたたずみ,美しく,落ち着いた雰囲気であった。そこで,南面に開いた家ではなく,景色の素晴らしい北面に大きな開口部をつくり,開放的な住空間をつくりながらも,プライバシーはしっかり確保するため,2階にLDKを配置した住まいとした。

選評

 本作品は,南側隣地の将来的な建物近接可能性と敷地北側に広がる絶景空間を考慮し,1階には大きなピロティーを設けて南北空間を繋ぐとともに,2階に大空間のLDKを配してその北側に大きなインナーバルコニーを設けることで,絶景空間への広がりを演出している。また,北向きであることを考慮し,各所に採光や開放感演出の工夫もあり,日本では必ずしも評価が高いとは言えない北向き住宅の新たな可能性を示す好例であると思われる。

 自然を臨む良好な景観を有し,開かれた空間とプライバシー確保を両立させ,豊かな生活を実現した住宅である。
建物下を通り抜け可能にして敷地を分断することなく,開放的な空間を楽しむ。一方,2階のインナーバルコニーはLDKへの視線を遮るが,トリミングされた景色を取入れ,半屋外のスペースを担う。また県産材などを使用し,意匠に連続性を持たせ,居心地を良くしている。
プライベート空間を大事にして,周囲環境を上手く取り入れた好事例である。