創意工夫点

 敷地は施主の祖父が住んでいた場所で隣には両親宅が位置していた。各世帯とその友人が集える場所として両親宅の前庭と一体利用できる中庭を設けた。その中庭を中心として敷地全体を広く使い,建築形状を利用して周辺環境との調和を図った。室容積に対して内部空間は大きく広がりを見せられるよう配慮した。珪藻土や無垢材など自然素材を多く使いながらも建築形状や開口部の工夫によって機械設備に頼らず質の高い室内環境を保つ住宅とした。

選評

 隣の両親宅前庭と一段下がった中庭を,両親宅,主屋,サニタリーをまとめた付属屋,物置で取り囲み,四周の環境に対応した巧みな配置である。家族生活の場となる主屋とワークスペースを兼ねた物置を通り土間で繋ぐ平面は,性格の異なる振る舞いと行為の場を設定した,明快で自由度の高い空間構成だ。主屋の吹き抜けが室内温熱環境に重要な役割を果たすなど,単純な構成を細やかな配慮と工夫が支えており,珪藻土と木の自然素材が醸すニュートラルな室内デザインも好感が持てる。