• 新たな2世帯 Before写真1

創意工夫点

 プライバシーを確保しつつ,ライフスタイルを尊重するため,2世帯に必要な動線計画(玄関,水回り,音の問題)を考慮した。ご両親の玄関から少し離れた場所に新居の玄関を設け,お風呂,水回りはご両親の寝室から離した間取りに。また,庭と暮らしをどのように,繋げるかを思案し,土間という中間領域を創り,内と外を繋げた。放熱効果が望める土間をタイルとし,冬の底冷え問題を解消するため,断熱材を埋め込み土間下地を造った。その他,壁,天井に断熱材を施工し,温熱環境を向上させた。また,築50年近くも経っており,家の傾きが生じていたため,たてりの修正,柱を鉄骨柱に入れ替えて補強を試みた。

選評

 思いの詰まった親世帯領域はできるだけそのままの形で,子世帯領域は庭から土間,リビング,キッチンへと連続する空間や,開放性のある浴室など,こだわりの空間が新たに創出されている。かつての縁側が吹抜のある土間に,2階の窓がハイサイドライトに生まれ変わり,庭から土間に差し込む光と影が美しい。玄関や階段を分けることで独立した暮らしが営めるとともに,住戸内での行き来も可能で,ちょうどいい親子の距離感が実現できている。

 建て替え希望の2世帯住宅を,提案力で新しい生活の実現と思い出の継承に成功した事例である。既存の構造フレームを残しながら,その中に2階の床撤去によってリビング上部に吹抜を設け,広縁のあった場所を玄関兼半土間とし,大胆にまったく新しい空間構成を実現している。大開口によって生じた耐震性能不足を鉄骨柱と開口上部の壁内に収めた鉄骨梁により補強し,意匠を邪魔しない工夫がみられる。どこにでもありそうな実家の改修の好例といえる。