創意工夫点

 プロジェクトの対象は,都市が多数ストックしているRC造の中古アパートのひとつです。築42年と「古く汚い」といったマイナスイメージのアパートに対し,改修による商品価値の向上が求められました。しかしながら,土地購入を要しない改修工事では,事業計画のなかで地方都市の優位性である土地代の差が利用できません。つまり低い賃料設定となる地方都市のアパート改修では,首都圏における賃料と工事費のバランスに対し,口一コスト化が課せられます。
 本プロジェクトでも厳しいコスト条件に対し建具,襖等は既存を利用し,最も安価な着替え手法である「塗装」を主とすることで,その条件をクリアすると共にデザイン性の向上を図りました。
 小さな改修工事ですが,地方都市におけるストックの再利用の応えのひとつではないかと考えています。

選評

 築42年と古く汚いといったマイナスイメージのアパートがリノペーシヨンをする事によって,蘇ったいい事例である。
 首都圏とはちがい賃料に反映しにくいリノベーション費用を低コストに抑えながらもデザイン性に富んだ仕上がりは,過去最高の空家率の現在,今後の地方都市のストック住宅の再利用の可能性を見出している。低コスト化とともに環境への配慮から既存をうまく利用した提案もうかがわれる。