• Old & New 古くて新しい古民家のカタチ Before写真1

創意工夫点

 築150年のこの古民家を魅力的に、快適に暮らし続けられる「古くて新しいOld & New」な古民家のカタチを提案した。外観は、石州瓦屋根の佇まいを残し、地域景観を保ちながら新しいファサードデザインとした。日常使われていなかった仏間、床の間、縁側は家族や友人、地域の人達が集える場とした。古民家特有の冬の寒さに対し、断熱パッシブエリアを定め、断熱性能は国が定める省エネ等級4に対しUA値0.68W/㎡K と大幅に達成した。室温の安定による暖房エネルギー負荷の削減により省エネ性の高いリフォームとなった。

選評

 古民家の宿命ともいえる冬の寒さ対策に対して、家全体を温めるという手法をとらず、ある程度の区画を限定し、集中的に暖房するということで生活空間を効率的に快適性を実現しており、壁掛けエアコンを床下に設置し、そこからダクトを通して各部屋に温風を送り込むことで、通常の床暖房と比べ経済的となっている。また、特徴的な白いボックスに囲まれた縁側が、庭と室内を上手く繋ぎ、家族だけでなく地域の人々が集える場として活躍することであろう。

 田園風景が残り、近所付き合いも残る、街の外れに佇む築約百五十年の古民家を、親子で住み継ぎ、寒さを克服した事例である。構造を工夫することで自然エネルギーを上手く取り入れている。断熱材は外壁の外から包み込み、暖房は床の吹出し口につながる二重底に、暖気を送る方法だ。デッキの白壁は家の内外を繋ぎ、人が集える場としつつ高台の景気が楽しめる。限られた条件下で、独自のアイデアとチャレンジをうかがわせる好例である。