創意工夫点

 2棟の建物の間が中庭になっている住宅である。眺望の良い北東に2階建てのリビング棟を設け,道路と並行に平屋の書斎棟を設けた。中庭は目線の切れる塀によりプライベートな空間になっている。雨の日はうっすらと水がたまり,気温が下がれば薄氷ができる。リビング棟の屋根は片流れの大屋根であり,樋を設けないことで,雨の日は雨粒が落ち,雪の日は雪が落ちてくる。中庭を含め季節を感じられる家になったのではないかと思う。

選評

 郊外の古い住宅団地内にある狭い行き止まり道路の先端に立つ,書斎兼事務所を持つ戸建て住宅である。一見,魅力の少ない敷地の先には,素晴らしい眺望が開けている。眺望を活かすため住宅の向きを雁行させ,書斎棟を分棟とし,中庭を同レベルで繋げる事で,一体感と開放感のあるプライベート空間を生み出している。オーナーは格安で敷地を購入されており,条件が不利な敷地であっても,設計の工夫により,土地固有の魅力を活かし,自分らしい生活を誰でも実現できる事を示した好事例である。