創意工夫点

 クライアントは府中家具の製造販売業を営んでおり,家具と住まいの緊密で新しい関係性を発信したいという思いがあった。
 プロジェクトでは,建築計画と並行して設置する家具を決め,それに合わせ空間設計を肉付けし,形を切り出す手法を採用した。その結果,採用した家具のカスタマイズや,建築への家具素材の応用,家具と建物の融合した設えなど,府中家具と建物の新しい関わり方が生まれ,「暮らしやすい」という家の本質を具える空間となった。

選評

 市道拡幅のため建て替えた高齢夫婦の家である。世代交代による変化にも対応出来るように,骨組みとなる躯体(スケルトン)と住宅内部の設備・間仕切り(インフィル)の関係を調整した。また,家具デザイナーとの協働で収納・生活家具,設備等の計画と建築計画が一体となって,材料と詳細が統一されたニュートラルな内部空間が巧みに構成されている。
 90㎝ではなく1mを単位とする寸法計画がゆとりをもたらし,暖冷房,給湯,換気を一体化した設備と共に,高齢者にとって快適な生活が営まれる,優れた住宅である。