創意工夫点

 周囲に山で囲まれたこの住宅では、稜線をトレースしたような山型の木架構で生活空間を包み、現場で搬出した石や土を活用した自然な起伏をもつ外構デザインを共生させることで、近景~遠景がつくる自然環境の一部に溶け込むように創られた。家の中央には家族が集う「縁の間」を計画し、設備室や個室はその周囲に隙間を空けて配置することで視線や光・風が抜ける「通り道」を用意した。隙間は程よい距離感を生み、家事動線を最小限にしながら回遊性が高く、限りなく外部環境に近い自然を取り込む空間を目指した。

選評

 周囲を山で囲まれた中に佇む山小屋風の住宅で、外部→庭→土間→室内へと繋がった空間が、室内に居ながら自然を感じられるとともに、外に開いた住環境を創出している。
 山風を感じる室内は、家族が集まる「縁の間」を中心に個室とキッチンが周りに配置されており、動線・視線への配慮とともに、家族内の繋がりにも好影響を与えている。
 多様な利用方法が考えられる大きなロフトをはじめ、シンプルな中に家族の様々なニーズを受け入れていく作りとなっており、自然・地域と調和しながら、家族の成長とともに住宅も成長していく可能性を感じる豊かな住まいづくりの好事例である。