創意工夫点

 施主が新たにこの地域にとけ込み,近隣に快く受け入れられることを念頭に,ロケーションを活かしたこの敷地ならではの住まいとなるよう心がけた。
 建物は平屋建ての分棟配置とし,それぞれの棟の高低差を調整しながら近隣のスケールに合わせ一体として美しく見えるよう配慮した。平面は単純で解りやすく,玄関を基点に家の表と裏,公と私の行き来を自由にし生活の幅を広げる事に努め,内外において動線の回遊性を重視した。

選評

 瀬戸内の豊かな自然とコミュニティに真正面から向き合った家である。新しい土地で新しいつながりを紡いでいくために,開く部分と閉じる部分が巧みに構成されている。集落に馴染むボリューム,室内からの海の景観,木材をあらわしにした天井の奥行き感,おしゃべりの場となる濡縁,菜園の産物やご近所からのおすそ分けが広げられる裏土間。東京から移住してきた家族が,穏やかな島での暮らしを構築していくプロセスが見える作品である。

 海と山に囲まれ,穏やかな瀬戸内海を眺めることができる敷地に建つ平屋分棟配置の建物である。LDK・和室棟と寝室棟の間に通り抜けられる土間玄関を配し,両棟も行き来できる配置は,生活にバリエーションをもたらすゆとりある設計となっている。プライバシーを確保しながらも開放的な風の吹き抜ける高い空間を持ち,地域になじんだ住宅である。